ありふれた話
戯曲・演出:北村耕治
場所:池袋 スタジオ空洞
山ノ井史(studio salt)
高木充子(劇団桃唄309)
環ゆら
菊池ゆみこ
舞台監督:橋本慶之
宣伝美術:土谷朋子(citron works)
制作:野﨑恵/猫の会
企画製作:猫の会
でたらめな生き方はあまり得意ではありません。
根が小心ですし、わりと潔癖なところもあるもんですから。
と口ではこのようにうそぶいて。
ものの弾みでずいぶんいい加減なこともしています。
ひとの傘を持ち帰るみたいに、ひとの女房と寝ています。
そうして知らん顔をしています。
日々を過ごすうち、何も感じないわけではありません。
苦しくて苦しくて胸がつぶれそうで、どうにもならない時もあります。
ふらふらどこかへ出かけましょう。
行き先決めずに行きましょう。
できうるかぎり無軌道に。
行けるところまで行きましょう。
いつも舞台監督をやってくれている橋本くんと「ウルトラ低予算・必要最小人数ですきなことだけやろう」とはじまった番外企画でした。チラシもA4片面でコピー用紙にがんがん刷ってました。極力お金を使わないぶん、制作だけは呼んでこよう!とクロムモリブデンの野﨑恵ちゃんをつかまえたり、わたし自身が演出に初挑戦したりといろいろ冒険ができました。
わたしは戯曲を書く際、ある「空間」とそこに「関わる人々」の関係性をよりどころにして物語をつくろうとする傾向があります。
本作は、ひさしぶりにそのアプローチから自由になった戯曲です。中心人物ふたりがすべてを放りだして一都三県を旅するお話ですから、視座を固定する空間はありません。そのかわり、刻々と変化する登場人物の心情や交流に対する精緻な描写を心がけました。
具体的に作品を立ちあげていく過程は稽古日誌でさんざん書き散らしてきたのでここでは触れませんけど。約十年ぶりに担当した演出は、けっこうな時間をかけてこり固まっていったわたしの演劇観をもみほぐし、原点へ立ちかえらせてくれる新鮮な体験でした。
「どうせクセになってこれからは全部演出する!とか言い出すんでしょ」なんて言われましたけど、今のところそういう予定はないです。でも演出のたのしさも知ってしまいました。これからは遊びの選択肢が増えたなあという気持ちです。